平成29年の初仕事!
日生から衣浦まで187トンの貨物船を回航する。
前に香港回航で一緒に行ったMさんが話しを持って来た。
今回もMさんが機関長で一緒に回航する。
出港日の前日、現地入りした。 後ほど新しい船主さんも現地に来て
引渡しが行われる。 船体の確認もするため船は上架されていた。
船内見学していると新しい船主さん夫婦と海事代理士Tさんが到着した。所有権移転の手続きのため船主さんが愛知県から連れて来たのだ。
雑談のなかで40歳半ばの新しい船主さんが「この船に残りの人生をかけて購入を決断したんですよ~」という話を聞きた。 自分はプレジャーボートを主に回航しているために無事に回航しなければというプレッシャーが重くのしかかる。
引渡しも無事終り、旧船主さんが一席設けてくれた。旧船主さんの冒頭あいさつで「事故もなく大切に乗ってきたM丸ですから新しい船主さんのもとでも事故なく運航することを祈ってます。」・・・プレッシャーが・・・
「佐藤くんお前免状持ってたんかぁ~」「回航もするんか」「どんなもんで衣浦着くんや?」酒も入り海事代理士T先生が話しかけてくる。自分がまだ大手輸入車ディーラーのマリン部で在籍していた頃からT先生とは面識
があった。当時T先生はベンツを乗り回してた。海事代理士は儲けるんだ!よし!海事代理士を目指そう!と開業し現在に至る。だが現実は海事代理士業の専業で食べていくことは難しく修理や回航などの仕事もしている。
専業で食っているT先生は一目置く存在である。
宴会も終り、満潮を待って船を降ろす。外海を走るためバラストタンクに海水を張る。
「船長、どんな航程で行きますか?」旧船主さんが聞いてくる「明るくなって出港し、鳴門を通るつもりです。」と答えると「鳴門はやめたほうがええ」「潮が早いけ明石回ったほうがええ」とのこと「朝一番で出ると
鳴門には逆潮転流1時間後で丁度いいときに通過できますよ」と答えるが「それでも明石を回ってほしいんじゃが」と旧船主さん。クルーザーなら迷うことなく鳴門を選ぶとこだが本船なら考えるところである。
「明日の朝になってどっちに行くか決めます」と答えた。
岸壁に着岸し本日の作業は終了した。 新船主さんは船で寝て明日の出港を見送るらしい。我々は近くの宿で
寝る。
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06:45 エンジン始動!
出港準備を手際よく行う。
船尾のロープを放し船橋へ駆け上がる。
マイクを持ち「オールラインレッコ!」(07:20)
左舷付けからの離岸だ!スラスターで岸壁から船首を離しながら、舵をハードポート、デッドスロー、ストップを繰返し船体を十分に話し180度右回頭し港口に船首を向けたとこで長音1発!サイドウィングに出て
手を振る。岸壁では新旧の船主さんが手を振っている感動的なシーンだ。
朝一番で「船長が鳴門通る言うから心配で来たんじゃ~」と旧船主さんが 日生出港!
心配して来てくれた。
「この時間から出るので明石向けます」と告げると「ほれがええ」と笑ってた。
07:35 機関増速! 低速エンジン独特の音!懐かしい! 最近は中・高速エンジン
の船ばかり乗ってるためだ。 プレジャーボートのマリン業界の人達にも以外に
知られていないが、本船のエンジンの始動はスターターモーターじゃなく圧縮空気で始動すること。 低速エンジンは危険回転域があること。
増速後、各計器類に異常はないか確認し自動操舵に切替える。 瀬戸内なので
波はない。速力は10,5ノットだ。
小豆島を通過し播磨灘の本船航路に乗せ明石海峡を目指す
12:00 明石海峡通過! 友ケ島に向け転針!
波はない!快適だ! 昼食にあったかいカップラーメンを食べることができる。
14:00 友ケ島通過!
16:35 日ノ御埼並航 転針!
夕日が綺麗だ! 日没なので航海灯を点灯
ここからは夜間航行になる。
18:50 市江埼並航
20:50 潮岬並航 転針!
21:35 樫野埼並航 転針!
4/7
01:05 三木埼並航
04:55 大王埼並航 転針!
朝日が昇るとても綺麗だ! まもなく伊良湖航路だ。
この船はAISは搭載していない。行先通報をしなければいけないなぁ~と
思っているところに警戒船から巨大船の航路航行情報が無線が入る。
VHFで伊勢湾マーチスに自船の情報を通報し07:10伊良湖航路通過。
師崎水道を通過し見えて来ました、衣浦港!
08:35 衣浦入港! 着岸地点へ向かう
09:50 無事着岸し回航終了!
綱取りに新船主さんが来てくれた。
「ありがとうございました」の言葉に達成感!
こちらこそいい経験をさせてもらい感謝です。